『ベイビー・ドライバー』2017 ノンストップ・サウンドトラック・アクション

1.イントロダクション

2017年に公開されたエドガー・ライト監督によるアクション映画です。この映画は、音楽とカーチェイスの見事なシンクロが特徴で、観客を引きつけるエンターテインメント作品です。物語は、音楽を聴くことで集中力を高める天才的な逃がし屋、ベイビーを中心に展開します。

彼の運命は、彼を取り巻くキャラクターたちとの複雑な関係や、彼自身の過去のトラウマと深く結びついています。この映画は、スタイリッシュな映像とリズミカルなサウンドトラックが一体となり、映画体験を新たな次元へと導いてくれます。

2.主要キャスト

2-1. アンセル・エルゴート（ベイビー役）

アンセル・エルゴートは、映画「ベイビー・ドライバー」の主人公であるベイビーを演じています。彼のキャラクターは、音楽を聴くことで集中力を高める天才的な逃がし屋です。ベイビーは、犯罪組織のドライバーとして働きながらも、自分の人生を変えようと努力しています。エルゴートの演技は、彼の複雑な内面と緊迫感を見事に表現し、観客を魅了します。

2-2. リリー・ジェームズ（デボラ役）

リリー・ジェームズは、ベイビーの恋人デボラを演じます。デボラは、ダイナーで働くウェイトレスで、ベイビーの逃避行に新たな希望を与える存在です。ジェームズの演技は、デボラの純粋さと強さを巧みに表現し、ベイビーとのロマンティックな関係を感動的に描き出します。

2-3. ケヴィン・スペイシー（ドク役）

ケヴィン・スペイシーは、犯罪組織のリーダーであるドクを演じます。ドクは、ベイビーを手元に置き、計画的な強盗を指揮する冷酷なキャラクターです。スペイシーの演技は、ドクの威圧感と計算高さを見事に表現し、物語の緊張感を高めています。

2-4. ジョン・ハム（バディ役）

ジョン・ハムは、元銀行強盗でドクの右腕であるバディを演じます。バディは、ベイビーに対して友好的な態度を見せつつも、次第に敵対心を抱くようになります。ハムの演技は、バディの二面性を巧みに描き出し、物語に深みを加えています。

2-5. エイザ・ゴンザレス（ダーリン役）

エイザ・ゴンザレスは、バディの恋人で共犯者のダーリンを演じます。ダーリンは、情熱的で大胆な性格の持ち主であり、ベイビーとデボラの関係にも影響を与える重要なキャラクターです。ゴンザレスの演技は、ダーリンの魅力と危険性を見事に表現し、物語に緊張感をもたらします。

3.ネタバレ

3-1. ベイビーの過去と動機

映画の中で明らかになるベイビーの過去は、彼の行動の動機を深く掘り下げています。幼少期に両親を交通事故で失ったベイビーは、そのトラウマから逃れるために音楽に依存しています。

また、彼がドクの組織で働く理由も明らかになります。過去の借金返済のために始めた逃がし屋の仕事が、次第に彼の人生を支配するようになっていきます。

3-2. ドクとの関係の変化

ドクとベイビーの関係は、映画の進行とともに複雑さを増していきます。最初は冷酷なビジネスパートナーとして描かれていたドクも、次第にベイビーに対する父親的な愛情を見せるようになります。

しかし、最後の強盗計画が失敗に終わった後、ドクは命を賭けてベイビーとデボラを守る決意をします。この行動がドクの本当の人間性を垣間見せる瞬間となります。

3-3. 最後の逃走とベイビーの選択

映画のクライマックスでは、ベイビーとデボラが最終的に逃走を試みますが、追い詰められていきます。バディとの対決シーンは特に緊張感が高く、ベイビーが自分の信念と愛する人を守るために戦う姿が描かれます。

最終的にベイビーは法の裁きを受けることになりますが、刑務所での時間を経て再びデボラと再会するシーンで映画は締めくくられます。この結末は、希望と再生のメッセージを強く伝えています。

4.監督と制作スタッフ

4-1. エドガー・ライト（監督）

イギリス出身の彼は、過去に「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ホット・ファズ」などの作品で知られています。ライト監督は、独特のスタイルとユーモアを持ち味としており、特に音楽と映像のシンクロに対するこだわりが本作でも強く表れています。「ベイビー・ドライバー」では、音楽とアクションの緻密な融合を見事に実現し、観客を引き込む映画体験を提供しています。

4-2. ニラ・パーク（プロデューサー）

ニラ・パークは、「ベイビー・ドライバー」のプロデューサーとして映画制作を支えました。彼女は、エドガー・ライト監督との長年のコラボレーションで知られており、ライト監督の過去作品でもプロデューサーを務めています。パークの制作手腕は、映画の質を高めるための重要な役割を果たしています。

4-3. ビル・ポープ（撮影監督）

ビル・ポープは、本作の撮影監督として、ビジュアルの美しさとダイナミズムを追求しました。彼のキャリアには、「マトリックス」シリーズや「スパイダーマン2」などが含まれており、アクションシーンの撮影において卓越した技術を持っています。「ベイビー・ドライバー」でも、彼の巧みなカメラワークがカーアクションシーンの迫力を引き立てています。

4-4. ジョナサン・エイモスとポール・マクリス（編集）

ジョナサン・エイモスとポール・マクリスは、本作の編集を担当しました。彼らの編集技術は、音楽と映像のリズムを完璧にシンクロさせるために不可欠でした。特に、アクションシーンと音楽が一体となった編集は、観客に強烈な印象を与え、映画全体のテンポを高めています。

4-5. スティーヴン・プライス（音楽監督）

スティーヴン・プライスは、「ベイビー・ドライバー」の音楽監督として、映画の音楽選曲とスコア制作を担当しました。彼は、音楽が映画のストーリーテリングにおいて重要な役割を果たすことを理解し、各シーンに最適な楽曲を選びました。プライスの選曲は、映画の雰囲気を一層引き立て、観客に忘れられない体験を提供しました。

5.映画で使われた曲(サウンドトラック順)

ディスク1

1. Bellbottoms – Jon Spencer Blues Explosion
   • オープニングシーンで、ベイビーが最初の強盗の逃走を手伝うシーンで使用されます。
     
     
2. Harlem Shuffle – Bob & Earl
   • ベイビーがコーヒーを買いに行くシーンで使用されます。彼が街を歩きながら、曲に合わせて動く様子が描かれています。
     
     
3. Egyptian Reggae – Jonathan Richman & The Modern Lovers
   • ベイビーが逃走車を隠すシーンで使用されます。軽快なリズムがベイビーのリラックスした状態と、その後の緊張感あるシーンとの対比を強調します。
     
     
4. Smokey Joe’s La La – Googie Rene
   • ベイビーがデボラと初めて出会うダイナーのシーンで使用されます。ロマンティックな雰囲気を作り出しています。
     
     
5. Let’s Go Away For Awhile – The Beach Boys
   • ベイビーがデボラと過ごす時間を夢見るシーンで使用されます。
     
     
6. B-A-B-Y – Carla Thomas
   • デボラとベイビーの関係が深まるシーンで使用されます。曲の歌詞が彼のニックネームとデボラへの感情を反映しています。
     
     
7. Kashmere – Kashmere Stage Band
   • ベイビーが逃走車を廃車にするシーンで使用されます。この曲のゆったりとしたリズムが、ベイビーの冷静さを強調します。
     
     
8. Unsquare Dance – Dave Brubeck
   • ベイビーが犯罪計画を立てるシーンで使用されます。変拍子のリズムが緊張感を高めています。
     
     
9. Neat Neat Neat – The Damned
   • 強盗の準備を進めるシーンで使用されます。パンクロックのサウンドが緊張感を高めています。
     
     
10. Easy (Single Version) – The Commodores
    • ベイビーとデボラが最後に逃走を図るシーンで流れます。この曲のリラックスしたムードが一時的な安堵感を表現しています。
      
      
11. Debora – T. Rex
    • ベイビーがデボラのことを思いながら運転するシーンで使用されます。ロマンティックな雰囲気を強調します。
      
      
12. Debra – Beck
    • ベイビーがデボラについて夢見るシーンで使用されます。さらに、彼の感情の深さを示しています。
      
      
13. Bongolia – Incredible Bongo Band
    • アクションシーンで使用されることが多い曲で、緊張感を増幅させます。
      
      
14. Baby Let Me Take You (in My Arms) – The Detroit Emeralds
    • ベイビーとデボラのロマンティックなシーンで使用されます。
      
      
15. Early In The Morning – Alexis Korner
    • ベイビーが一日の始まりを迎えるシーンで使用されます。

ディスク2

1. The Edge – David McCallum
   • 犯罪計画を立てるシーンで使用されます。ベイビーが仕事に向けて準備する時に流れます。
     
     
2. Nowhere To Run – Martha Reeves & The Vandellas
   • 強盗シーンで使用され、緊張感を高めます。
     
     
3. Tequila – The Button Down Brass
   • 強盗のシーンで流れる曲です。この陽気なリズムが、緊迫した状況に一瞬の軽やかさをもたらします。
     
     
4. When Something Is Wrong With My Baby – Sam & Dave
   • ベイビーがデボラとの関係を考えるシーンで使用されます。感情の深さを強調しています。
     
     
5. Every Little Bit Hurts – Brenda Holloway
   • ベイビーが困難な状況に直面するシーンで使用されます。
     
     
6. Intermission – Blur
   • シーンの間をつなぐ曲として使用されます。
     
     
7. Hocus Pocus (Original Single Version) – Focus
   • 中盤のカーチェイスシーンで使用されます。高速テンポとエネルギッシュなフルートソロがベイビーのドライビングテクニックを引き立てます。
     
     
8. Radar Love (1973 Single Edit) – Golden Earring
   • 高速道路のカーチェイスシーンで使用されます。緊迫感と疾走感を高める楽曲です。
     
     
9. Never, Never Gone Give Ya Up – Barry White
   • ロマンティックなシーンで使用されます。ベイビーとデボラの関係を強調します。
     
     
10. Know How – Young MC
    • アクションシーンで使用されます。エネルギッシュなラップが雰囲気を盛り上げます。
      
      
11. Brighton Rock – Queen
    • 映画のクライマックスである、ベイビーとバディの対決シーンで使用されます。ギターソロの激しさが二人の衝突の激しさを象徴しています。
      
      
12. Easy – Sky Ferreira
    • ベイビーとデボラが一時的な安堵感を得るシーンで使用されます。
      
      
13. Baby Driver – Simon & Garfunkel
    • エンドロールで使用される曲です。この曲の軽快なリズムとポップなメロディが、ベイビーの新たな始まりを祝福します。
      
      
14. Was He Slow (Credit Roll Version) – Kid Koala
    • エンドクレジットで流れる曲です。映画の締めくくりに使われます。
      
      
15. Chase Me – Danger Mouse featuring Run The Jewels and Big Boi
    • エンドクレジットの途中で流れる曲です。エネルギッシュなラップが映画の終わりを飾ります。

6.トリビア

6-1. エドガー・ライトの音楽愛

監督のエドガー・ライトは、音楽への強い愛情と深い知識を持っており、「ベイビー・ドライバー」ではその影響が随所に見られます。ライトは自身のiPodに保存していた楽曲をリストアップし、それに基づいて映画のシーンを構成しました。彼は音楽と映像のシンクロに特にこだわり、各シーンがまるでミュージックビデオのように緻密に編集されています。

6-2. 長い構想期間

「ベイビー・ドライバー」のアイデアは、ライトが1995年にロサンゼルスを訪れた際に生まれました。実際に映画の制作が始まるまでに約20年が経過しています。この長い期間にわたって温められてきたアイデアが、映画の完成度の高さにつながっています。

6-3. アクションシーンのリアルさ

映画のカーチェイスシーンは、CGIを最小限に抑えて撮影されました。ほとんどのシーンは実際のドライバーによって演じられており、そのリアルさが観客に臨場感を与えています。プロのスタントドライバーたちが、精巧なドライビングテクニックを駆使して、映画の迫力を支えています。

6-4. ベイビーのサングラス

ベイビーが着用しているサングラスは、実際にエドガー・ライトが自分用に買ったものです。彼がこのサングラスを気に入り、主人公のトレードマークとして映画に登場させることを決めました。サングラスはベイビーのキャラクターを象徴するアイテムとなっています。

6-5. サウンドトラックの多様性

「ベイビー・ドライバー」のサウンドトラックには、1950年代から2000年代までの幅広いジャンルの楽曲が含まれています。これにより、映画は多様な音楽スタイルを融合させ、観客に新鮮な感覚を提供しています。映画のシーンごとに異なる楽曲が使用されており、それぞれの曲がシーンの雰囲気や感情を強調しています。

6-6. キャストの音楽準備

キャストの中には、映画に出演する前に音楽のトレーニングを受けた者もいます。例えば、リリー・ジェームズはダイナーで歌うシーンのために歌唱指導を受けました。また、アンセル・エルゴートはピアノと歌の訓練を受け、ベイビーの音楽愛をリアルに表現しました。

6-7. オマージュと引用

映画の中には、過去の名作映画や音楽ビデオへのオマージュが多く含まれています。例えば、ベイビーが音楽に合わせて車を操作するシーンは、1978年の映画「ドライバー」へのオマージュです。また、音楽と映像のシンクロは、ミュージックビデオの影響を強く受けています。

6-8. ベイビーのiPodコレクション

ベイビーが映画の中で使用しているiPodは、様々なモデルが登場します。彼は複数のiPodを所持しており、それぞれに異なるプレイリストが入っています。これは、彼の音楽への情熱と、音楽が彼の生活において重要な役割を果たしていることを示しています。

7.評価

7-1. 映像と音楽の融合

多くの批評家は、音楽と映像の完璧なシンクロに驚嘆しました。特に、カーチェイスシーンが音楽のリズムに合わせて編集されている点が高く評価されました。「ローリングストーン」誌のピーター・トラヴァースは、「エドガー・ライトは音楽とアクションを見事に融合させた」と述べ、映画の新しいスタンダードを確立したと評価しました。

7-2. キャラクターの魅力

アンセル・エルゴートの演技についても、多くの批評家が称賛しました。彼の演じるベイビーのキャラクターは、内向的でありながらもカリスマ性を持ち、観客の心を掴む存在となっています。ニューヨーク・タイムズのマノーラ・ダーギスは、エルゴートの演技を「繊細でありながらも力強い」と評し、映画全体の魅力を引き立てていると述べました。

7-3. 監督のビジョン

エドガー・ライト監督の独特なビジョンも評価の対象となりました。ライトの緻密な脚本と監督手法は、映画全体を通して一貫したスタイルを持ち、そのクリエイティブなアプローチが批評家から高い評価を受けました。「ガーディアン」のピーター・ブラッドショーは、「ライト監督はジャンルを超越し、観客に全く新しい映画体験を提供した」と賞賛しました。

7-4. サウンドトラックの選曲

映画のサウンドトラックは、多様なジャンルと時代の曲を取り入れており、その選曲のセンスが評価されました。「バラエティ」誌のオーウェン・グレイバーマンは、「サウンドトラックは映画の心臓部であり、各曲がシーンの感情と完璧にマッチしている」と称賛しました。

7-5. テンポと編集

映画のテンポの良さと巧みな編集も、批評家から高く評価されました。映画が持つリズム感とスピード感が、観客を最後まで引きつける要因となっています。「エンターテインメント・ウィークリー」のクリス・ナシャワティは、「テンポの良さと編集の巧みさが、この映画を一級のエンターテインメントにしている」と評価しました。

7-6. 総評

総じて、「ベイビー・ドライバー」は、その革新性とスタイルの独自性で批評家から広く称賛されました。多くの批評家が、映画のビジュアルとサウンドの融合、キャラクターの魅力、監督のビジョンを高く評価し、これらの要素が相まって観客に強い印象を残したと結論づけました。Rotten Tomatoesでは、93%の新鮮度評価を得ており、Metacriticでも非常に高いスコアを記録しています。

8.次に観たくなる映画

8-1. 「ドライヴ」(2011)

監督: ニコラス・ウィンディング・レフン
主演: ライアン・ゴズリング, キャリー・マリガン, ブライアン・クランストン

概要:
「ドライヴ」は、スタイリッシュなアクションスリラーで、寡黙なスタントドライバー兼逃がし屋である主人公が、ある事件をきっかけに危険な状況に巻き込まれていく物語です。ライアン・ゴズリングが演じる主人公の冷静さと、映画全体のムーディーな雰囲気、そしてクラシックなシンセポップのサウンドトラックが魅力です。アクションと音楽の融合が「ベイビー・ドライバー」に似ており、エネルギッシュでスリリングな体験を提供してくれます。

8-2. 「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010)

監督: エドガー・ライト
主演: マイケル・セラ, メアリー・エリザベス・ウィンステッド, キーラン・カルキン

概要:
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」は、同名のグラフィックノベルを原作としたアクションコメディです。エドガー・ライト監督が手がけるこの映画は、ビジュアルと音楽のリズム感が特徴的で、コミックブックやビデオゲームの要素がふんだんに盛り込まれています。スコット・ピルグリムが彼の新しい恋人の邪悪な元カレ軍団と戦うというストーリーで、ポップカルチャー好きにはたまらない作品です。ライト監督のユニークなスタイルを楽しめる一作です。

8-3. 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014)

監督: ジェームズ・ガン
主演: クリス・プラット, ゾーイ・サルダナ, デイヴ・バウティスタ, ヴィン・ディーゼル, ブラッドリー・クーパー

概要:
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は、マーベル・シネマティック・ユニバースの一部で、宇宙を舞台にしたアクションアドベンチャー映画です。音楽が物語の重要な要素となっており、1970年代から1980年代のヒット曲がふんだんに使われています。クリス・プラット演じるスター・ロードとその仲間たちが、銀河を守るために冒険を繰り広げる物語は、ユーモアと感動が詰まったエンターテインメント作品です。音楽とアクションの絶妙なバランスが「ベイビー・ドライバー」に通じる魅力です。